むかし鹿児島の空港は市街地にあった。鴨池という錦江湾に面した海沿いの土地で、今は野球場もある町だ。海をはさんで桜島が目の前に迫る風光明媚な場所だが、あまりにも市街地に近すぎるせいか1972年に現在の溝辺町(霧島市)に新しい空港ができて鴨池空港は町の中に埋没していった。空港は街中から近いほど便利だが、現代の空港の規模や騒音、周囲への安全性などを考えれば新しい空港はどこも市街地から遠く離れた場所に開設される。いま日本国内でもっとも「近い」空港は福岡だろう。そしてその次は意外にも羽田かも知れない。鹿児島空港は溝辺に移ることによって、遠い高原地帯にある空港となった。それでも市内中心部からバスで40分弱で着く。また霧島に観光で訪れるなら便利な位置にある。ターミナルビルはさほど特徴のあるものではなく、施設にもこれと言って注目するようなものはない。それより意外なことに最近脚光を浴びている嘉例川(かれいがわ)駅が近い。1903年(明治36年)の開設時に建てられた木造駅舎が今も現役で使われている
肥薩線の無人駅である。たしかに一見の価値はある。空港の敷地からだと北へ約2キロ。ターミナルからは5キロほどで明治の駅舎に着く。